登記官が職権で所有者を調査できるようになる
「表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律」が今国会で可決された。
法律の骨子は、次のとおり。
所有者が不明な土地について、登記官が職権で自らまたはその委託した物が所有者を調査出来るようになった。
調査結果を登記に反映させることができる。
不明の場合、利害関係人の申し立てによって管理者(特定不能と地等管理者)を選任できる。管理者は、管理保全措置の他、裁判所の許可をもらって売却等の処分もできる。
5/17付の日経新聞によると、この条件を満たす土地は全体の1%。まさに、始めの一歩である。
今後所有者不明の土地を増やさないために有効なのは?
2018年に、所有者のわからない土地が増え続ける という記事を書いたが、まだまだ根本的解決にはほど遠い。
不動産が「負動産」とまで言われるようになった根底にあるのは人口減による〔土地価格〕の下落である。
相続者不明土地が増える大きな要因は相続登記をしないで放置すること。相続しても処分できそうにない土地を、手間と費用をかけて相続登記するのは無駄だと思うのも無理がない。相続人が甥姪の場合なおさらだろう。相続登記を義務化して罰則を設ければ、相続登記を怠ることは少なくなるだろう。
また、相続放棄は意外にハードルが高い。相続放棄をすると住んでいる不動産や換金できる不動産や預貯金・債権等も相続できなくなる。また、相続を知った日から原則6か月以内に裁判所に申し立てる必要がある。
日本には、不動産の所有権を放棄できる制度がない。地方公共団体に寄付しようとしても、そう簡単には受けてくれない。税収が減る上に管理責任も問題になるので仕方ないと思う。
地方では、より問題が深刻だ。
さらに踏み込んだ対策としては?
所有者には土地を管理する責任がある。責任を果たさない者の権利を守ることはないのではないか。団地内の宅地を草ぼうぼうにしておく、危険家屋を修理も取り壊しもしない、道路に気がはみ出すなど安全を脅かす、周囲の環境を悪化させているなどの場合、がんがん売ってしまって解体等にかかった費用を回収すればいい。現状のまま安く売ってもいい。
売る前に公示する、売却益から譲渡益を差し引いて供託してそのことを公示。一定期間名乗り出なければ、国庫にとすれば、環境も良くなって税金も入って有効利用もできり。以降固定資産税も入る。
「権利の上に眠る者」は保護されないのである。
乱暴な論理かもしれないが、一極集中が緩和されたら、地方都市でも空き地問題がある程度緩和するのではないか。高いところに暮らさなければ、必要となる土地面積は増える。東海沖地震や南海トラフ地震が危惧されているのに、大災害が予想されている地域に人口が集中しているのは大問題なのに、大部分の国民はぼんやりとした危機感しか持っていないように感じる。