「所有者不明土地問題研究会」 発足
「所有者不明土地問題研究会」という少し長ったるい名前の研究会がつくられ、増田寛也(元岩手県知事)が座長をつとめ2017年から活動を始めている。この研究会の報告が、今各メディアで頻繁にとりあげられている。
報告の内容は、「さまざまな事情で所有者がわからなくなった土地がどんどん増えている。これは由々しき問題なのでどうにか解決策を探らなければ」簡単にまとめるとこういうこと。
具体的数字では、法務局で10万筆の不動産ををサンプル調査したところ約3割は所有者にたどりつけなかった、というのだ。410ヘクタール(九州より広い面積)が所有者不明と推計される。
以下もう少し報告の内容を詳しく書く。
なぜ、このようなことが起きているのか。大きな要因は、不動産神話が崩壊したこと。高度成長時代、不動産価格は上がるものだった。所有しているだけで価値が上がるなら財産として登記もする。しかし、人口減で不動産価格が下がると、管理したり固定資産税を払う意味がなくなる。親元から離れた子供が親の不動産を相続するケースが増える、先祖とのつながりが希薄になるなど、複数の要因が絡み合っての現象だということ。
さらに、日本では所有権移転登記は義務ではないため(特に)相続登記を怠るケースが多いのも要因のひとつ。
所有者がわからないと何が問題なのか
おおきくは三つの問題が発生する。
①国土や街が荒廃する
空き家や空き地が放置され、管理先がわからないと手が出せない。隣に廃屋のような家があったら不用心である上、不動産としての価値も下がりかねない。行政も簡単には手が出せない。
山林は、管理がなされず荒廃が進む。
②不動産取引や公共事業に支障が出る
東日本大震災の集団移転用地を探したとき、所有者不明の土地がネックになった。新しく道路を作ろうとしても、1か所所有者不明の土地があれば、そこで作業は止まってしまう。私たち不動産業者も、買いたい不動産にアプローチができない。地上げをしたいと思っても、所有者不明地があれば万歳である。
③固定資産税収入が減る
地方では、土地の固定資産税の評価が下がり続けている。その上、所有者不明で徴収できない案件が増えれば財政上の影響も無視できない。
では、どうするか(解決に向けて)
研究会は現段階では現状分析をしたところまでで、提言についてはこれからである。
以下はおおむね私の意見。
2つの観点
①これから先、所有者不明の不動産を増やさないためには
登記を義務化する。登記も戸籍も電子データ化されているから、所有者と戸籍・住民票を紐づけし、死亡届が出されたらその相続人に相続登記を促し、一定期間内に手続きが行われなければ過料を科すくらいは出来ると思う。マイナンバーもこういう面で活用すればいい。一元管理されるのは嫌だという人もいるだろうが、相続登記がなされないことで起きる社会的不利益を考えればありえる方法だと思う。併せて登記に必要な戸籍等の書類を自分の住所地の役所で一気に取得できるようにする。
②今ある所有者不明の不動産をどうするか
固定資産税も納めていない所有者が権利だけ主張するのはいかがなものか。所有者をたどる手続きを決めそれでも不明な場合は公示送達などの手続きを経て公売や徴集ができるようにする。危険空き家なら解体して売却し差額を一定期間預かり、その期間を過ぎても所有者の申し出がなければ市町村の歳入とする。道路など公共用地の買収なら一定期間内に申出があれば本来支払うはずだった金銭を支払う。さまざまなケースが出るだろうが、基本的考え方は、権利の上に眠る者の所有権は保証しない。一定期間は金銭補償をする。それを過ぎたら没収。公共的必要がある場合、危険な場合、周囲の環境に著しい悪影響を及ぼす場合なと限定的に運用されないといけないと思うが。
個人的なことだが、自宅前の道路がまさに所有者不明。通り抜けができ車もそれなりに通る道だが、相続が複雑になり過ぎて市道にもしてもらえない。市が除雪や補修はしてくれるが、家を新築するには道路に面する人の同意が必要という煩わしさがある。
最後に、ちょっとわかりにくい写真を載せます。 |