2020年4月から民法が変わる~契約不適合責任とは?

改正ポイントはここ~不動産売買に関わる重要な改正です

2020年4月から民法の条文が大幅に改訂されます。その中でも不動産にかかわる重大な改定が、「契約不適合責任」(民法第三編債権・第二章契約・第三節売買)です。売主が提供した物が契約の内容に合っていない場合、買主は以下の請求をすることができます。
原則として、まず①追完請求(修補の請求)ができます。契約内容に合うように修繕等を求めることです。
修補をしてもらえないときは催告(催促)してから、または最初から修補が不可能な場合には、②契約の解除(軽微な場合はできない)・③代金の減額請求 ができます。①・②については、売主に責任がある場合のみ、併せて損害賠償請求が可能です。また、④損害賠償請求のみも可能です。
※追完請求については、買主に不相当な負担を課さない限り、買主が請求したのと違う方法で売主に修補することを認めています。

また、請求できるの期間も定められています。買主は、不適合を知ってから1年以内に通知しなければばりません。請求できることを知った時から5年または請求できるときから10年で権利はなくなります(消滅時効といいます)。
契約不適合は強制的な規定ではないので、売主・買主の合意で、適用しないことも、通知可能な期間を○か月、○年などと短縮することもできます。実際には契約書の中で期限を定めることになるでしょう。

今の規定との違いをざっくり説明すると

改正民法は2020年4月施行で、2020年3月31日までは、現在の民法によります。
現在の民法で「契約不適合責任」に近いのが、①危険負担(契約後引き渡しまでに物件が壊れたらどうするか)②売主の瑕疵担保責任(引渡し後隠れた瑕疵(欠陥)があった場合をどうするか)の2つです。①については売主が直して渡す。買主が購入目的を達することができないときや修復にお金がかかり過ぎるときは契約解除ができる、②については契約の解除または損害賠償の請求ができることになっていました(全国宅地建物協会作成の不動産売買契約標準書式による)。任意規定なので、この内容は自由に変えられます。
新しい法律では、買主がより保護されています。これまでは、損害賠償請求または契約解除しか手段がありませんでしたが、改正法は、まず直してもらう、売主が応じなければ減額請求もできると選択肢が増えました。請求できるのは、「引き渡したものが契約内容に合わない場合」と一本化されて分かりやすくなりました。

自分を守るのは自分です~後悔のない契約をするためにできること

「契約不適合責任」はこれまでの民法になかった新しい概念のため、裁判例がありません。
もともと売主・買主の利益は相反するため、もめる要素はたくさんあります。損害賠償請求にかかる売主の責任の有無の線引き、契約解除ができる「軽微でない場合」の線引き、どの程度に修補すればよしとされるのか、などです。
では、引渡し後にもめないためにはどうしたらよいのでしょう。絶対避けられる方法はありませんが、判例がないからこそ細かいところまで決めておくことが必要になります。
売主の立場では、「物件は、建ててから時間が経って劣化した住宅であり、その分は売買価格を減額しているので、引き渡し後に何かあってもそれは売主の責任ではありません」、こういう条項を契約書に入れるのもひとつの方法です。
とはいえ給湯器が付いていたのに引渡し後すぐに動かなくなったりすれば、問題になる可能性大です。引き渡し前に、機器の点検をして不具合があったら修繕しましょう。明らかに耐用年数が経過している器具については原則撤去することとし、買主の希望によっては残した場合は壊れても責任を負わないとすれば自己防衛になります。
目に見える基礎のヒビ・天井のシミや建物の傾き、洗面所等の床がぶかぶかしていないかなどを、販売前にチェックすることも求められるでしょう。仲介する業者さんに相談してみてください。また、業者買取りでは業者が物件を調査するので、売主は責任を負わないとするのが一般的です。

買主の立場では、請求できる期間を確保するのが大事です。売主にとっては、この期間が短ければ短いほど有利なので、そこは交渉力です。売主の場合と同様、いろいろな想定をして細かいところまで決めることも必要です。
更地を買って家を建てようとしたらガラ(解体のときにでたコンクリート片など)が大量に埋まっていたということもあります。当社ででも、古屋付き土地を買い取ったら、それ以前にあった建物の基礎が壊した建物の基礎の下に残っていたことがりました。買った人が建物を建てて発覚しました。売主も全く知りませんでした。大量のレンガが埋まっていたこともありますし、隣の家の水道管が敷地内を通っていたこともあります。掘ってみないととわからない「不適合」もありますので気をつけましょう。

法律は難しいし関心がないという方も多いと思いますが、不動産の売買に係わることなので書いてみました。
法律そのものはともかく、売買するときは契約内容をきちんと吟味しなければいけないということをご理解ください。

2019.12.21