不動産の価値を高める「美しい街並み」

地方都市では、人口減が大きな問題になっている。
不動産でいえば、人口減それも就労人口が減ることによって取引件数が減って地価が下がる。
私たち不動産業者にとっては死活問題である。

秋田県でいえば、17年連続で地価が下がっている。
下落率は小幅になっているとはいえ、この傾向は続くと言われている。秋田市でも、最高値だった時と比べて50~60%地価が下がっている地点が多い。

こんななかで、秋田市の御所野元町が健闘している。
地価公示の基準値に選定されたのが平成13年だが、平成27年まで32.4%の下落にとどまっている。
ちなみに人気のある住宅地の泉中央で50.1%、秋田駅に近い高級住宅地とされていた南通築地では54.8%の下落率である。
御所野は、秋田県と秋田市が誘致した郊外の大規模団地で、県庁までは直線で約9キロという位置にある。

郊外の地価は中心部より下落幅が大きいというのが全体の傾向であることを考えると異常値といえる。
御所野は団地内に大型ショッピングセンター・小学校・中学校などがあり、通勤を別にすれば暮らしやすいといえる。
特筆すべきは「街並みの美しさ」。団地の随所に配置された公園、整備されたインターロッキングの歩道、街路樹・・・
「緑化協定」を定め、各宅地に花の咲くシンボルツリーを2種ずつ配給し宅地内に植樹することを義務化。また、道路面には植樹帯を設けサツキを植えるという街造りをした。春にはライラック、秋にはナナカマドなど、歩いていても楽しい。また、外構も義務化されていたので、更地に住宅があって、カーポートだけ土間うちしているなどどいう殺風景な住宅がない。手入れされれいる家が多い。

アメリカでは、地価は美観に左右されるので、高級住宅地では管理が徹底しているそう。芝が伸びすぎたり、傷ついた壁を放置していると罰金をとられるらしい。アメリカでは一生で何度も住み替えるのが普通なので、売るときに価値が上がるが下がるかは大きな関心事であり、自分だけでなく街区全体で美観を保つというのが当たり前に行われている。

日本では、結婚して賃貸住宅に住み、子供が出来て家を建て(買い)、死ぬまでそこに住み続けるのも珍しくない。美観によって価値が下がることにあまり頓着しないのも仕方がないと思われる。
しかし、いつ不動産を売る事態になるかは誰にもわからない。
人口が減り続ける中、地区による地価格差は開いていくと考えられる。どうせ住むならきれいな街がいい。
これからは、マンションのように管理組合を作って管理費を徴収して街並みを維持し価値を上げる、そんな団地の形態が普通になるかもしれない。